有機溶剤の持込使用届の書き方|全建統一様式第11号の欄、種別と区分の色の調べ方、SDSと掲示
有機溶剤の持込使用届は、塗料・接着剤・シンナー・灯油などを現場に持ち込んで使うときに、元請に出す届です。全建統一様式第11号「有機溶剤・特定化学物質等持込使用届」では、材料ごとに商品名・搬入量・種別・含有成分を書き、使用場所・保管場所・作業主任者・換気等の対策を書きます。この記事では、内装工事の記入例を使い、種別の調べ方と、届に書いたことを現場の掲示につなげる方法を説明します。
目次
有機溶剤の持込使用届は、有機溶剤を含む塗料や接着剤、特定化学物質、灯油などの危険物を現場で使う会社が、使う前に元請の所長へ出す届です。元請はこれを見て、どんな物がどれだけ現場に入るか、どこに保管するか、誰が作業を指揮し、どう換気するかを確かめます。
この記事では、株式会社サンプル工業(内装工事の一次下請)が、株式会社サンプル建設の「〇〇ビル新築工事作業所」に、継ぎ目の下地のシンナー・床の接着剤・採暖の灯油・防水のプライマーを持ち込む場面を例にします。商品名・量はすべて架空の例です。実際の成分は、必ず材料のSDS(安全データシート)で確かめてください。
有機溶剤の持込使用届とは|現場に入る化学物質を元請に届ける書類
有機溶剤の持込使用届とは、有機溶剤・特定化学物質・危険物などを現場に持ち込んで使うときに、材料ごとの内容と使い方を元請に届け出る書類です。全建統一様式では第11号「有機溶剤・特定化学物質等持込使用届」がこれにあたります。
第11号の欄と、様式の注記をまとめます。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 使用材料・商品名・メーカー名 | 何に使う、どの製品か |
| 搬入量 | 持ち込む量(缶の大きさ×数など) |
| 種別・含有成分 | 有機溶剤の区分や特定化学物質の類など、ラベルやSDSの成分から写す |
| 使用場所・保管場所 | 使う場所と、置いておく場所 |
| 使用機械又は工具・使用期間 | 使う道具と、使う期間(予定) |
| 作業主任者等 | 作業を指揮する人の氏名 |
| 作業手順書・SDSの添付 | 有・無 |
| 換気等対策 | 換気・保護具などの対策 |
様式の注記には、商品名・種別・含有成分などは材料に添付されているラベルや成分表などから写すこと、危険物とはガソリン・灯油・プロパン・アセチレンガスなど、有害物とは塗装や防水などに使う有機溶剤・特定化学物質など、と書かれています。届の頭には、使うときはSDSの内容を掲示して作業員に知らせ、関係法規を守る、という一文が入っています。
ポイントはここです。有機溶剤の持込使用届は、届を出して終わりではなく、届に書いた種別とSDSの内容を、現場の掲示と作業員への説明につなげるための書類だという点です。
有機溶剤の持込使用届に関わる法令
有機溶剤の持込使用届に書く中身は、有機溶剤中毒予防規則(有機則)と労働安全衛生法につながっています。主な決まりを、届の欄と並べます。
| 決まり(要旨) | 届のどこに関わるか |
|---|---|
| 有機溶剤等とは、有機溶剤と、有機溶剤を重量の5%を超えて含む混合物(有機則 第1条) | 種別・含有成分 |
| 有機溶剤等は第1種・第2種・第3種に区分される(有機則 第1条) | 種別 |
| 防水その他の面の加工、接着のための塗布、接着などは有機溶剤業務に入る(有機則 第1条) | 使用材料(用途) |
| 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者から作業主任者を選ぶ(有機則 第19条) | 作業主任者等 |
| 疾病の種類と症状、取扱い上の注意、中毒時の応急処置などを掲示する(有機則 第24条) | 換気等対策・掲示 |
| 区分を色分けなどで見やすい場所に表示する(第1種 赤・第2種 黄・第3種 青)(有機則 第25条) | 種別 |
| 通知対象物を譲渡・提供する者は、文書(SDS)を交付する(労働安全衛生法 第57条の2) | SDSの添付 |
有機則 第1条の有機溶剤業務には、有機溶剤等を使った防水その他の面の加工、接着のための塗布、塗布された物の接着、洗浄などが入っています。床の接着剤を塗る作業や、防水の下地にプライマーを塗る作業は、この業務に当たる場面です。届の使用材料(用途)の欄に「床の接着」「防水の下地」と用途を書いておくと、元請がどの業務に当たるかを判断しやすくなります。
有機則 第24条・第25条の掲示と表示は、屋内作業場などで有機溶剤業務を行うときの決まりです。内装工事は建物の中での作業が中心なので、この決まりに当たる場面が多くなります。どの場所が屋内作業場などに当たるかは、元請と一緒に確かめておくと安心です。
有機溶剤の持込使用届の種別の調べ方
有機溶剤の持込使用届でいちばん迷うのが、種別の欄です。種別は、材料に含まれる成分と、法令の区分で決まります。調べる順番は次のとおりです。
- SDSを取り寄せる販売店かメーカーから、材料ごとのSDSを取り寄せる
- 成分を見るSDSの組成・成分の欄で、含まれる物質と含有量を見る
- 区分を当てる有機溶剤の一覧や特定化学物質の一覧と照らして、区分を確かめる
- 届に写す種別・含有成分を届に写し、SDSを添付する
- 掲示する区分の色と注意事項を、使う場所の見やすいところに掲示する
有機溶剤の区分は、労働安全衛生法施行令 別表第6の2 の一覧と、有機則 第1条で決まっています。一覧と条文の号を突き合わせると、主な物質は次のように分かれます。
| 区分 | 主な物質(別表第6の2 から抜粋) | 区分の色 |
|---|---|---|
| 第1種有機溶剤等 | 1・2-ジクロルエチレン、二硫化炭素 | 赤 |
| 第2種有機溶剤等 | アセトン、キシレン、酢酸エチル、トルエン、メタノール、メチルエチルケトンなど | 黄 |
| 第3種有機溶剤等 | ガソリン、コールタールナフサ、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット | 青 |
内装・塗装・防水の現場でよく見るのは、第2種と第3種です。たとえばミネラルスピリット(ミネラルシンナー)は第3種、トルエンやキシレンを含むシンナーは第2種に当たることが多くなります。ただ、同じ「シンナー」という名前でも、製品によって成分が違うので、名前だけで区分を決めずにSDSで確かめます。2つの区分の物質が混ざっているときは、有機則 第1条の決まりで、含有量によって区分が決まります。迷ったら、SDSを添えて元請に相談するのが確かです。
もう1つ気をつけたいのが、有機溶剤ではなく特定化学物質に入っている物質です。たとえばエチルベンゼンは、労働安全衛生法施行令 別表第3 で特定化学物質の第2類に入っています。塗料のSDSの成分に特定化学物質が含まれていれば、種別の欄にはそれも書きます。
有機溶剤の持込使用届の書き方|材料ごとの欄
有機溶剤の持込使用届の材料の欄は、材料ごとに1行で書きます。記入例の4つは次のとおりです。
| No. | 使用材料(用途) | 搬入量 | 種別 | 含有成分 | 区分の色 | SDS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 塗装(ボードの継ぎ目の下地) | 16L×2缶 | 第2種有機溶剤等 | トルエン・キシレン(例) | 黄 | 有 |
| 2 | 床の接着 | 18kg×4缶 | 第2種有機溶剤等 | 酢酸エチル(例) | 黄 | 有 |
| 3 | 採暖(ジェットヒーター) | 18L×2缶 | 危険物(引火性の物) | 灯油 | ― | 有 |
| 4 | 防水の下地 | 14kg×1缶 | 第2種有機溶剤等 | (SDSを取り寄せ中) | 黄 | 無 |
搬入量は、一度に持ち込む量を書きます。保管場所に置ける量と合わせて考え、使う分だけ持ち出す運用にしておくと、現場に置く量が増えすぎません。灯油は有機溶剤の区分には入らないので区分の色は「―」ですが、様式の注記では危険物の例に挙がっているので、届に書きます。
4番目のプライマーは、SDSがまだ手元にないので「無」になっています。このままでは成分も区分も確かめられないので、持ち込む前にSDSを取り寄せ、種別と含有成分を書き直してから出します。
有機溶剤の持込使用届の書き方|場所・作業主任者・換気等の対策
有機溶剤の持込使用届の下の欄には、使用場所・保管場所・使用機械又は工具・使用期間・作業主任者・作業手順書とSDSの添付・換気等の対策を書きます。記入例は次のとおりです。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 使用場所 | 3〜5階 各室(窓のある室から順に) |
| 保管場所 | 1階 危険物保管庫(施錠・消火器あり)。使う分だけ持ち出す |
| 使用機械又は工具 | 刷毛・ローラー・へら・ジェットヒーター |
| 使用期間(予定) | 2026/12/7〜2027/2/19 |
| 作業主任者等 | 鈴木 次郎(有機溶剤作業主任者技能講習 修了) |
| 作業手順書・SDSの添付 | 作業手順書 有・SDS 有(No.4 は取り寄せ中) |
作業主任者は、有機則 第19条で、有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者から選ぶことになっています。届の作業主任者の欄には、氏名だけでなく技能講習を修了していることも書いておくと、元請が作業員名簿と見比べずに確かめられます。
換気等の対策は、記入例では、窓・開口を開けて換気する、送風機を使う、有機ガス用の防毒マスクなど呼吸用保護具を用意する、区分の色と注意事項を掲示する、灯油は別の場所で保管して火気を近くで使わない、空き缶・ウエスはふた付きの容器で持ち帰る、の6つにしています。### 有機溶剤の持込使用届と現場の掲示
有機溶剤の持込使用届を出したら、届に書いた内容を現場の掲示につなげます。有機則 第24条では、屋内作業場などで有機溶剤業務に従事させるときは、次の事項を見やすい場所に掲示することになっています。
| 有機則 第24条の掲示事項(要旨) | 掲示に書くことの例 |
|---|---|
| 有機溶剤で起きるおそれのある病気の種類と症状 | SDSの「有害性」の欄から、頭痛・めまいなどの症状を写す |
| 有機溶剤等の取扱い上の注意事項 | ふたを閉める・火気を近づけない・換気しながら使う |
| 中毒が起きたときの応急処置 | 新鮮な空気の場所に移す・元請と救急に連絡する |
| 呼吸用保護具を使わなければならない場所では、その旨と保護具 | 対象になる場所なら、有機ガス用の防毒マスクなど |
これに有機則 第25条の区分の色を合わせて、使う場所の入口などに掲げます。届の種別とSDSがそろっていれば、掲示はそこから写すだけで作れます。届と掲示を同じ日に用意する段取りにしておくと、持ち込んだその日から決まりどおりに使い始められます。
送風機などの電気の機械を持ち込むなら、電動工具の持込機械等使用届も一緒に出します。
有機溶剤の持込使用届でよくある間違いと直し方
有機溶剤の持込使用届の間違いは、種別とSDSに集まります。差し戻されやすいものをまとめます。
| よくある間違い | 直し方 |
|---|---|
| 種別が「シンナー」「塗料」だけ | SDSの成分で、第何種有機溶剤等か、特定化学物質かを書く |
| SDSを付けていない | 販売店・メーカーから取り寄せて付ける |
| 作業主任者の欄に技能講習を修了していない人 | 有機溶剤作業主任者技能講習の修了者を書く |
| 灯油やガスを書いていない | 危険物も届に書く(様式の注記) |
| 保管場所が「現場内」だけ | 階・場所・施錠や消火器の有無まで書く |
| 届と掲示の区分の色が違う | 届の種別から色を決めて掲示する |
有機溶剤を使う場所の近くで、溶接やバーナーなどの火気を使うと、引火のおそれがあります。同じ日に同じ階で作業が重ならないように、火気使用願の書き方で説明している許可の段取りと合わせて調整します。作業ごとの危険と対策は、工事安全衛生計画書の記入例のリスクの表にも書いておくと、元請に説明しやすくなります。
有機溶剤の持込使用届を無料テンプレートで速くするには
有機溶剤の持込使用届は、材料が増えるほど、区分の色とSDSのそろい方を確かめるのに手間がかかります。安全書類フクロウの無料テンプレートは、全建統一様式第11号の記載項目に沿って、区分の色と確認の表示を自動で出すようにしました。
| 有機溶剤・特定化学物質等持込使用届 | |||||||||
| 全建統一様式第11号の記載項目に沿った様式です。有機溶剤・特定化学物質・危険物を持ち込んで使う会社が、使う前に所長に届け出ます。元請の指定の様式があれば、そちらに従ってください。 | |||||||||
| 提出日 | 2026/11/02 | 事業所の名称 | 株式会社サンプル建設 〇〇ビル新築工事作業所 | ||||||
| 所長名 | 佐藤 一郎 殿 | 一次会社名 | 株式会社サンプル工業 | ||||||
| 使用会社名( 次) | 株式会社サンプル工業(一次) | 現場代理人(現場責任者) | 山田 太郎 | ||||||
| 下記の有機溶剤・特定化学物質等を持ち込み・使用しますので、お届けします。使用にあたっては、SDS(安全データシート)の内容を掲示して作業員に知らせ、関係法令を守ります。 | |||||||||
| No. | 使用材料(用途) | 商品名 | メーカー名 | 搬入量 | 種別 | 含有成分 | 区分の色(自動) | SDS(有・無) | 確認(自動) |
| 1 | 塗装(ボードの継ぎ目の下地) | 〇〇ラッカーシンナー(例) | 〇〇塗料 | 16L×2缶 | 第2種有機溶剤等 | トルエン・キシレン(例:SDSの成分欄から写す) | 黄(第2種) | 有 | |
| 2 | 床の接着 | 〇〇床用接着剤(例) | 〇〇化学 | 18kg×4缶 | 第2種有機溶剤等 | 酢酸エチル(例:SDSの成分欄から写す) | 黄(第2種) | 有 | |
| 3 | 採暖(ジェットヒーター) | 灯油 | ― | 18L×2缶 | 危険物(引火性の物) | 灯油 | ―(有機溶剤の区分なし) | 有 | |
| 4 | 防水の下地 | 〇〇プライマー(例) | 〇〇工業 | 14kg×1缶 | 第2種有機溶剤等 | (SDSを取り寄せ中) | 黄(第2種) | 無 | SDSを取り寄せて添付する |
| 5 | |||||||||
| 6 | |||||||||
| 種別の例:第1種有機溶剤等・第2種有機溶剤等・第3種有機溶剤等・特定化学物質(第◯類)・危険物(引火性の物など)。どれに当たるかは、SDSの成分と法令の区分で確かめます。 | |||||||||
| 作業主任者等の氏名 | 鈴木 次郎(有機溶剤作業主任者技能講習 修了) | 作業主任者の資格 | 有機溶剤作業主任者技能講習 | ||||||
| 使用場所 | 3〜5階 各室(窓のある室から順に) | ||||||||
| 保管場所 | 1階 危険物保管庫(施錠・消火器あり)。使う分だけ持ち出す | ||||||||
| 使用機械又は工具 | 刷毛・ローラー・へら・ジェットヒーター | ||||||||
| 使用期間(自)(予定) | 2026/12/07 | 使用期間(至)(予定) | 2027/02/19 | ||||||
| 作業手順書の添付(有・無) | 有 | SDSの添付(有・無) | 有(No.4 は取り寄せ中) | ||||||
| 換気等の対策(行うものに「済」) | |||||||||
| 対策 | 済・該当なし | メモ | |||||||
| 窓・開口を開けて換気する | 済 | ||||||||
(この下に6行あります。全体はダウンロードしたExcelで見られます)
テンプレートでは、種別に「第1種」「第2種」「第3種」の言葉を入れると、区分の色(赤・黄・青)が出ます。SDSが「有」でない材料には「SDSを取り寄せて添付する」、種別に「有機」とあって作業主任者の氏名が空欄なら「作業主任者の氏名を書く」と表示します。換気等の対策は「済」か「該当なし」を選ぶと、数が出ます。
区分の色の列をそのまま掲示の準備に使えるので、届と掲示の色が食い違うのを防げます。
有機溶剤の持込使用届の書き方のよくある質問
有機溶剤が少しだけ入った材料も届けますか?
有機則では、有機溶剤を重量の5%を超えて含む混合物を有機溶剤等としています。どこまでを届けるかは元請の決まりで違うので、SDSで含有量を確かめたうえで元請に聞いてください。
区分の色はどこに表示しますか?
有機則 第25条で、屋内作業場などで有機溶剤業務を行うときは、区分を色分けなどで見やすい場所に表示することになっています。第1種は赤、第2種は黄、第3種は青です。
SDSはどこでもらえますか?
労働安全衛生法 第57条の2 では、通知対象物を譲渡・提供する者はSDSを交付することになっています。材料を買った販売店かメーカーに求めます。
水性の塗料も届けますか?
水性でも有機溶剤や特定化学物質を含む製品があります。名前で決めずに、SDSの成分で確かめてから、元請の決まりに合わせて届けます。
有機溶剤の持込使用届の書き方のまとめ
有機溶剤の持込使用届は、有機溶剤・特定化学物質・危険物を現場で使う前に、材料ごとの内容と使い方を元請に届ける書類で、全建統一様式では第11号です。
- 種別と含有成分は、SDSの成分で確かめて写す
- 第1種は赤・第2種は黄・第3種は青。届の種別から掲示の色を決める
- 作業主任者は、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者を書く
- 灯油などの危険物も届に書く
- SDSが手元にない材料は、取り寄せてから持ち込む
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